ホアキン・フェニックス主演の新作映画がユニークな心の旅を描く

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[ガーリーなお部屋で目覚めた不安だらけの中年ボー(ホアキン・フェニックス)。奇妙な心の旅は、まだ途中です©2023 Mommy Knows Best LLC, UAAP LLC and IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.「ジョーカー」のホアキン・フェニックス主演最新作は、「ミッドサマー」の〝鬼才〟アリ・アスター監督とタッグを組んだ奇想天外、複雑怪奇なロードムービー。もう1回、見直したくなるけど、上映時間179分と長尺でございます。
先週、大阪・梅田芸術劇場メインホールで山崎育三郎主演ミュージカル「トッツィー」(19日まで)を観劇しました。ダスティン・ホフマンが主演した1982年公開の同名映画が原作。ホフマンふんする売れない実力派俳優は女装してドラマのオーディションに合格し、ブレークするけど、こちらの設定は舞台俳優になってました。女装したり、素に戻ったりの早着替えを繰り返しながら劇中劇で聴かせる〝女優〟山崎育三郎の歌声が、まぁ~お見事!余談ながら、小栗旬のものまねでおなじみ、おばたのお兄さんもガッツリ笑いを取ってました。「千と千尋の神隠し」に続く熱演で、いまや舞台に欠かせぬ名脇役です。
さてそこで、この写真だけを見れば、ホアキン演じる主人公に女装趣味でもある? と思わせる本作。オープニングは暗闇の中で鼓動が響き、やがて光が見えるとオフ気味に「なんで私の産んだ子を落としたの!」と女性の悲鳴が上がる。主人公ボーの産まれたときの記憶です。場面変わって、セラピストに「うがい薬を飲んでもうたけど、がんにならへん?」とボソボソ訴えてる中年になったボー。極度の怖がりで常時不安に苛まれてる。荒廃した街の一角にある自宅アパートで寝ていると、玄関の隙間から「音を立てるな」とメモが何度も差し込まれ、逆に隣室から大音量が。翌日、水を買いに出た間に見知らぬ男女に自室を荒らされ、玄関先には入れ墨男の死体が転がっていた。実家の母親にSOSの電話をかけると宅配員が出て「配達に来たら、シャンデリアが落ちてて、女性の頭が…」。風呂場にこもって悲しみに暮れてたら、天井に張り付いて泣いてる(!)謎の男性が落ちてきた。まさに阿鼻叫喚。部屋を飛び出すと全裸のナイフ男に襲われ、命からがら逃げようとして車にはね飛ばされた。かくして、この写真。運転していた外科医夫妻宅に運ばれ、高校生の娘の部屋を病室代わりに介抱されていた次第です。ここまでが、起承転結の「起」。母の葬儀に参列すべく、外科医宅を脱出したボーの旅は、迷い込んだ森の中で混迷を深める「承」、たどり着いた実家で初恋の女性とお久しぶりの〝合体〟を果たした恍惚の最中に衝撃の事実が明かされる「転」を経て、カオスの極みの「結」へと続く。母親に心の奥底を支配されてきたボーが、妄想と現実、過去と現在をさまよう旅。チラシにはポン・ジュノ、マーティン・スコセッシらの絶賛コメントが並んでます。正~直、平々凡々たる初老的には鑑賞後も消えない「?」が。再び179分…悩ましいわぁ。(笹井弘順)

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