大沢たかお主演の「沈黙の艦隊」が配信開始、予算の大部分は制作費に投じられた

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「沈黙の艦隊」の配信記念イベントに登場した主演の大沢たかお(中央)らキャスト陣1980~90年代に大ヒットした人気漫画「沈黙の艦隊」が連続ドラマとなって、今月9日からプライム・ビデオで世界独占配信された。
主演の大沢たかおを取材させていただくにあたり、一足先にシーズン1の全8話を視聴させてもらった。
Amazonスタジオが日本で過去最大級の予算を投じて制作したとあって、VFX(視覚効果)を駆使した東京湾での戦闘シーンには圧倒させられた。
非公表の制作費は私の勝手な憶測だが、おそらく億単位だろう。
出演陣も一流俳優がそろい、揺れ動く心の機微まで繊細に描かれていた。
特に米国の言いなりだった日本政府が、主人公の海江田艦長に導かれるように独り立ちしていく描写には引き込まれていった。
原作者の漫画家、かわぐちかいじ氏は連載当初、実写化は不可能と言っていたが、配信記念イベントで「あふれる緊張感と、みなぎる現実感で仕上げていただいた」と感謝の手紙を寄せたのが全てのように思う。
もう一つの注目点は、ドラマの前半部分のダイジェスト版を劇場映画として昨年9月に先行公開していることだ。
東宝配給で興収13・4億円の大ヒットを記録しており、Amazonはこのときすでに制作費を上回る収入を得た計算になる。
プロデューサーも兼務する大沢が取材中に「日本のエンタメ界には新しい形を作り出さないといけない危機感がある。そういう意味でこのコラボは画期的だった」と語ったときには、思わずうなずいた。
日本のテレビドラマは年々予算がかけられなくなっているのが現状だ。ましてやAmazonのプライム・ビデオであれば240カ国・地域以上の人々に見てもらえる。
そして、Amazonが今度は東映と組んで人気アニメを実写化させる。漫画やアニメのみならず、YOASOBIの主題歌「アイドル」が世界中でヒットした「【推しの子】」だ。
「沈黙の艦隊」とは逆にプライム・ビデオで連ドラとして今冬(11~12月)に世界独占配信し、まだ漫画でも描かれていないクライマックスシーンを正月映画で公開するようだ。
人気絶頂アイドルで双子の母、しかもファンに殺されてしまうアイ役を元乃木坂46の齋藤飛鳥、双子の兄・アクア役をMr.Childrenの櫻井和寿の息子、櫻井海音、妹・ルビー役を齊藤なぎさが演じる。
キャスティングにはファンの間から賛否両論あったようだが、個人的には期待している。
ただ、ルビーがメンバーのアイドルグループ、B小町の人選はぴたりハマったと感じた。
人気子役だった有馬かな役は境遇が重なると思わずにはいられない原菜乃華、金髪ユーチューバーのMEMちょ役は外見や雰囲気がドンピシャのあのちゃんと、現在大人気の2人を持ってきたのは楽しみでしかない。
役柄はあえて言わないが、成田凌、吉田鋼太郎、倉科カナ、安達祐実、志田未来ら豪華キャストが脇を固めており、「【推しの子】」も多大な制作費が投入されているに違いない。
ストーリーは芸能界の闇やタブーを描いたシーンが随所に出てくるだけに、どこまで表現するのかにも注目したい。
特に人気漫画の舞台化に際し、原作者が改変された脚本を受け入れられず、直してほしいと要望するシーンは、時期的にもテレビドラマでは自粛せざるを得ないだろう。
若者がテレビを見ない時代に突入した今、Amazonのみならず、Netflix、Huluなど、米国資本の配信ドラマが大量の予算を投じて良質な作品を生み出す。テレビ局は本気で対策を考えないと、無料放送で見られるテレビドラマがなくなってしまうと言ったら言い過ぎか…。(山下伸基)

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