俳優テオ、長編映画『パスト ライブス/再会』で注目の演技を披露

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本作で長編映画監督デビューを飾ったセリーヌ・ソンがメガホンを取った『パスト ライブス/再会』は、「運命」の意味で使う韓国の言葉“縁(イニョン)”をキーワードに展開するラブストーリー。

久しぶりに顔を合わせたノラ(グレタ・リー)とヘソンは、ニューヨークの街を歩きながらこれまでの互いの人生について語り合い、過去自分たちが「選ばなかった道」に思いを馳せる。

そんな本作でヘソンを演じるテオは、ソン監督がオーディションで見つけ出した俳優だ。

韓国人の父と母を持ち、ドイツ・ケルンで生まれ育った彼は、高校時代、膝のケガでバスケットボール選手への道を絶たれ、“演技”に巡り合う。高校卒業後は、ニューヨーク、英ロンドンで演技を学んだが、欧米ではそのルックスからアジア人の役しか回ってこなかったという。

そして二度目の渡米時に一回り年上でカメラマンの妻と出会い、結婚後、韓国に渡った。知名度が無い時期は、劇中4回しか登場しない悪役や主人公の親友として3話で亡くなる役など、メインとは言い難いキャラクターを演じてきたが、そんな時は自分の好きな俳優達がどのようにキャリアを積んでいったのかを調べたそうだ。

「ヒース・レジャーも、デンゼル・ワシントンも似たような役割を果たして、自分の色をはっきりと見せる時期がありました。マシュー・マコノヒーは10年間ラブコメを中心に出演していたけど、『ダラス・バイヤーズクラブ』でドラマチックな役柄を演じアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で主演男優賞を獲った。そういった軌跡を見ながら、自分がどのような役割を果たさなければならないのか、グローバル市場ではどのように見えるのか考えるようになりました」と過去を振り返る。

15年の長い下積みの後、2017年『LETO』を引っ提げカンヌ国際映画祭のレッドカーペットに降り立ったテオ。韓国系ロシア人であり旧ソ連の伝説的ロック歌手ビクトル・ツォイ役に、2000倍の競争率の中から選ばれた彼は、以降韓国でも活躍の場を広げていく。そんな中『パスト ライブス/再会』のシナリオと巡り合ったというが、その時のことをこう語っている。「最初に脚本を読んだ瞬間からすごく感動してしまい、泣き出してしまったんです。とても美しい映画だった」。

また、ドイツで幼少期を、欧米で青春を過ごしたテオにとって、この映画の中で描かれている“縁(イニョン)”という概念が強く心に響いた。「ソン監督が、この韓国ならではの文化を分かりやすく西洋の観客に紹介してくれたことがすごくうれしかったし、幸運であるとすら思いました。日々の生活の中で、韓国ではすごくカジュアルに使われているからです。物語の主題であるこの“縁(イニョン)”という観念を学びながら、哲学や仏教思想などを自分の人生と関連付けて考えるようになったところが、この作品と出会った上で一番特別なことでした」。

これまでの生い立ちやキャリアを思い返した時にテオがぶつかる壁は、アイデンティティのあり方である。そんな悩みにも、この作品との出会いで救われたそうで「韓国で生まれ育った俳優をキャスティングすることもできたはずなのに…。自分が韓国人だというアイデンティティを認められたようで胸がいっぱいでした。ニューヨークの真ん中で交通規制をして、あちこちに韓国語が書かれたタイトルがついていて、私の名前が書かれた椅子が置かれていて。 夢のような状況でした」と喜びをかみしめながら語る。本作で彼が演じたヘソンは、ソウルで生まれ育ち、兵役を経験した後大人になっても家族と同居しているという、劇中の言葉を借りると「韓国的な男らしさ」を持った人物だ。

そんなテオは英国アカデミー賞にノミネートされているほか、前作がアメリカで大ヒットしたNetflixドラマ『ザ・リクルート』シーズン2の主演にも抜てきされ、ますます注目度が上がっている。「演じることは私の夢だったし、今でも夢なんです。私が演技を選んだのではなく、演技が私を選んだのだと感じています」と語る彼に、世界中の熱視線が注がれている。

映画『パスト ライブス/再会』は、4月5日公開。

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